【能登半島地震の集団疎開】保護者の同意なく中学生を地元へ戻す「残念なずさん行政」

教科書でしか知らない「集団疎開」

 2024年1月の夕方に起こった「能登半島地震」。

元旦のまさかの大災害に、日本中の方が驚いたことだろう。

集団疎開

 能登半島に位置する石川県 輪島市でも甚大な被害を被った。

そのため輪島市は、1月末から中学生19人を市外に集団疎開させた

 実際のニュースで初めて耳にした「集団疎開」

(集団避難と表現するメディアもあるが、この記事では集団疎開に統一)

今までは歴史の教科書でしか見たことがなく、この現代でも大々的に行なわれたことに衝撃を受けた。

 能登半島は一見すると陸の孤島、復興も大変だろう。

そんな中、「未来ある子どもらに学習環境を整えること」は、重要ではあると思う。

一部ネットニュースでは「集団拉致」などという否定的な意見もあるが、被災地の惨状を鑑みての苦渋の決断ともいえるのだろう。

集団疎開

なぜか集団疎開から戻される中学生

 しかし翌2月になり、集団疎開した輪島市の中学生が保護者の同意がないまま、地元に戻されたことが分かった。

輪島市教育長の弁明によると、対象の二つの中学校校長に解除の選択肢を説明したところ、「帰還するしか選択肢がない」と伝わったそう。

伝え手と受け手双方で何やってるの!?という感じだが、裏でどうにも大きな力が働いていそうだ

「解除」の結論ありきで、事が進んでいた思われても不思議ではない。

 とにもかくにも「集団疎開」でも面食らったが、それがあっさり解除された輪島市

大災害からの復興のなか、自治体行政は大混乱だろう。

その中で行なわれた住民置き去りの措置、特に中学生や育児世帯にこの仕打ちはツラい

 今回の記事では、輪島市の混乱の舞台裏を推測するとともに、「集団疎開」が行われた背景にも踏み込む

すると、どの地方でも避けては通れない課題が見えてきた

集団疎開

公務員を自己都合退職した私のこと(プロフィール)

 田舎の県で地方公務員として、約15年間勤務する。

前職の経歴と風貌から、税金の徴収係などハードな部署に回され続ける。

一時的に被災地支援の業務にも携わったことがあるが、そこで行政の限界を感じる

第二子誕生の際、当時の男性では珍しい1年間の育休を取得

育児をこなしながらも、今後の人生を真剣に考え公務員を退職して独立

引き継いだ農地で小規模農業を行いつつ、ブロガーとして歩み始める

・もっと知りたい方 → 私のプロフィールへ(内部リンク)

集団疎開

集団疎開を解除した輪島市

 この集団疎開の解除の知らせは、全国ニュースで取り上げられた。

その結果、ずさんなやり方が露呈し非難の的となった。

「集団疎開」よりも、「解除」ニュースの方が注目されていたようだ。

これについて、石川県輪島市の小川教育長は、反省の弁を述べている。

「教育行政を預かるトップとして痛恨の極みです。

本当に関係の皆さま、何をおいても生徒、そしてその保護者関係者に心からおわび申し上げます。

集団疎開の通知文の発出について

結果として保護者の皆さまは、「なんだこの紙切れ、帰れということか」と。

まったくおっしゃる通りです。これはなんの弁解の余地もありません。

自分の不手際です、本当に申し訳ございません」

集団疎開

どうにも解せぬ通知

 現地マスコミの取材によると、こんな経緯だ。

 大地震が発生した当月の1月下旬には、輪島市から

集団避難を解除する可能性があるが、他の保護者には内密にしてください

と連絡があったそう。

すると翌月2月には、「集団避難解除」の通知があった。

受け入れ準備もままならない保護者は、市に問い合わせたところ、

あなた以外の皆さんは同意されている」と相手にされなかった様子。

実際に保護者全員が同意していないのは、明白になった。

集団疎開

 輪島市の小川教育長は取材に対し、

「地元に戻れること」を伝えたつもりだったが、選択肢がないかのような誤解を与えてしまった

と謝罪した。

輪島市によると、今後、輪島市で授業を受けるか再び市外に避難するかの意向を改めて聞き取って対応するとしている。

解除に有無を言わせない構造

 この通知の前後で飛び交っているセリフ、

他の方には内密にしてください

他の方は全て同意している

という発言には、行政の悪質な意図を感じてしまう

 保護者にとっては、解除の有無に何も言えない構造になっている。

集団疎開

保護者側の心境

 集団疎開の解除に関して、地元中学のPTAからこんな意見があった。

「(家に)住めない状況になって避難所暮らしをしている人もいるわけです。

子どもたちが戻ってくるって言われた瞬間に皆さん困惑していたんです。

避難所にいても子どもたちが安心して暮らせる環境がない、学べる環境がない」

集団疎開

 確かに中学生の子どもと離れて暮らす不安はある。

しかし被災後の復興ままならない地で、子どもの学びに影響してしまうとの葛藤があることだろう。

 「集団疎開」の決定で不安なまま子どもを送り出し、すぐさまの「解除」で再び心を揺さぶられる

保護者として、たまったものではないだろう。

集団疎開/解除の是非

 そもそも今回の大地震を受けて行われた「集団疎開」は、その是非が問われている。

学習の権利や生活環境を考えると、致し方ない面もある。

それゆえ輪島市だけでなく、近隣の珠洲市などでも集団疎開が実施されている。

これは、過疎化が進む能登半島全体の問題でもある

集団疎開

 それを早々かつ強引に解除した輪島市は、やはり「集団疎開」に反対だったのだろうか

この解除は、議員をはじめ地元有力者の「過疎化させるな」の声を受けたものだと、推測される。

このような判断は、住民を抱える自治体が下すもの。

周りがとやかく言えるものでもないが、この右往左往に振り回される住民は哀れである。

強引に解除を進めた輪島市

 結論から言うと、今回の解除を強引に進めた輪島市には余裕がなかったのだろう。

あれだけの被害を受けたのだから当然だろう。

自治体の職員も被災し、仕事もままならない方もみえるだろう。

そんななか集団疎開を解除させたい地元民から、突き上げをくらいどうしようもなくなったか

集団疎開

 通常の自治体ならば「解除できない理由」を並べ立て、解除を先延ばしにしそうなもの。

だからこそ、この輪島市のスピーディな解除には、逆に驚くものであった

それくらい地元からの突き上げが凄まじかったと推測できる。

中学生や保護者は置き去りの解除措置

 しかしここで忘れてはならないのが、主役でもある地元の中学生と保護者世帯

困難な避難生活ののなかで、この行政のドタバタ劇。

こんな状況で解除するならば、最初から集団疎開させるな!」と言いたいところだろう。

過疎化を心配する地元に反し、中学生たちはこんな心許ない自治体で暮らしたいと思えるだろうか

結果的に、中学生に行政の醜態を見せてしまったことになる。

クローズアップされたが、全国的に議論されない集団疎開

 今回の能登半島地震を受けて、「集団疎開/集団避難」という言葉が出てきた。

東日本大震災のときにも、実質的に行なわれていたのだろう。

しかしこれらの言葉は、今回の大地震でクローズアップされた気がする。

私は「中学生が親元を離れる」という事実に、かなりの衝撃を覚えた。

 子どもの生活権が脅かされる事態に、国レベルでもっと議論の対象となってもよさそうなものだ。

よくよく考えると、この背景には東日本大震災後に進んだ「コンパクトシティ」構想が関係しているようだ。

集団疎開

集団疎開のウラにある「コンパクトシティ」構想

 「コンパクトシティ」構想とは端的に言うと、

人口減で税金収入が少ないから、みんなで集住して行政経費を抑えましょう

というものだ。

 国としても国内の人口減を受けて、本腰を入れて進めなければいけない事項。

特に過疎化が進む地域では、待ったなしに議論すべき課題である。

特に今回の被害を受けた能登半島は、過疎化が進行中と言わざるをえないだろう。

復興の財源も限られているので、その投資先も吟味する必要がある。

その中で、これから存続できるか分からない教育施設を復興させる必要があるのか、という声が挙がるのも当然だろう。

(その状況下で、集団疎開をすぐに解除した輪島市の対応が逆に不自然でもあるのだが)

 コンパクトシティの是非は別にして、このような大災害時に一気に事が進むのは非情な話

国の官僚は「渡りに船」でここぞとばかりに、コンパクトシティ構想を進めるのではないか

 次に大地震が起きた地方でも、同等かそれ以上の集団疎開を覚悟しなければならない。

また廃線の危機にある鉄道インフラがダメージを受けると、復旧できずにそのまま廃線という事態も十分に考えられる。

集団疎開

最後の疑問 集団疎開?集団避難?

 この問題は。最初は「集団疎開」として認識され始めたと思う。

しかし時間の経過とともに、「集団避難」に置き換えられた様子。

集団疎開では戦時中の非情なイメージが付きまとうからか、よりソフトな集団避難に換えられたのではないか。

これから国や自治体が発表するフレーズは、「集団避難」に統一されるだろう

こういうのは、言葉のイメージが大事ですから!

集団疎開

まとめ 集団疎開の流れは、今後も加速する

 今回のドタバタ劇で露呈することになったが、地方で大災害が発生するたびに集団疎開の話が持ち上がってくるだろう。

この人口減が進む国内地方では、どこでも避けられない話題になってくる。

コンパクトシティを形成して行政のスリム化を図らないと、どこの自治体も生き残れない状態なのだ。

そんな流れのもとで、まずは右往左往しない自治体やそれを形作る議員を選ぶことが重要だ。

集団疎開

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