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不妊治療は、女性に大きな負担
不妊治療クリニックの診察室から、女性が涙を流しながら出てきた。
必死に涙をこらえようとしているが、それは歓喜によるものではない。
明らかに、悲しみの涙である。
全く面識のない女性だが、我々夫婦は彼女の全身から言い尽くせない悲しみを感じた。
あの光景を忘れることは、きっとないだろう。
ツラい不妊治療
不妊治療はツラい。
今思い返しても、夫婦としてとてもツラかった。
不妊治療の大前提として、不妊治療では、女性側が心身ともに多大な負担が強いられる。
わが家では5年間ほどの不妊治療を通じて、2人の子どもを授かった。
その5年間の課程で、ひととおりの不妊治療を経験している。
決して1回の治療で、子宝に授かれたわけでもない。
言いようのない悲しい思いに打ちひしがれたこともある。
だからこそ、この治療を乗り越えてくれた妻には、ひたすら感謝、感謝である。
ゴールの見えないマラソン
そんなツラい不妊治療をたとえるならば、
「ゴールの見えないマラソン」
さらにツラいのは、後ろから「タイムアップ」という非常なジャッジが迫ってくることである。
2021年9月14日付けの毎日新聞では、日産婦調査によると、
「14人に1人が体外受精児 2019年、最多6万人誕生」とのこと。
体外受精児の割合もどんどん上昇してきている。
子供に恵まれない男女が、科学の力で子供を授かれるようになったのは、とてもありがたいことであると感じる。
我々夫婦も、不妊治療の技術進歩にとても感謝している。
しかしながら、男性の私が不妊治療の辛さを語るには、あまりにも僭越である。
そこで、不妊治療に悩むカップルに対して、カップルとしてのツラさから始め、男性側のツラさや女性へのフォローなど、お役に立てる情報をお届けしたい。
不妊治療は「ゴールの見えないマラソン」だが、助力を得て走れるようにこの記事を書き上げた。
不妊治療を経験した私のこと(プロフィール)
田舎の県で地方公務員として、約15年間勤務する。
2020年の第二子誕生の際、男性では珍しい1年間の育休を取得。
育児をこなしながらも今後の人生を真剣に考え、公務員を退職して独立することに。
公務員の最終年度に育児に注力した結果、「有給消化46日/年度」という伝説的記録を叩き出す。
「あれだけ休んで、業務ノルマを軽く達成したイクメン」として同僚から注目を集めるが、上司からは「休みすぎ」という理由で最後に減点評価をされる。
引き継いだ農地で小規模農業を行いつつ、ブロガーとして歩み始める。
・もっと知りたい方 → 私のプロフィールへ(内部リンク)
夫婦・カップルとしてのツラさ
不妊治療は、夫婦・カップルとしてもツラい。
そのツラさを3方面から解説する。
金銭面
まず、「不妊治療」と言っても、大きく二つに分けることができる。
イメージを掴んでもらうためにも、金額を含めてざっくりと説明する。
- 一般不妊治療・・・血液検査、タイミング法、人工授精 → 約3万円まで
- 高度不妊治療・・・体外受精、顕微受精、凍結融解肺移植など →約10万円~
一般不妊治療でもけっこうな出費となるが、高度不妊治療となると桁が違ってくる。
そして最もツラいところが、当然ながら100%成功するわけではないということ。
さらに、受精してもその卵が正常に成長できるとは限らない。
不妊治療の追い風として、令和4年4月から人工授精等の「一般不妊治療」、体外受精・顕微授精等の「生殖補助医療」について、保険適用されることとなった。
(ただし年齢制限として、治療開始時の女性の年齢が43歳未満)
・参考;:厚生労働省ホームページ → 不妊治療に関する取組 (厚生労働省)
今まで都道府県レベルでの補助金が存在していたが、所得制限などによりその対象がある程度限られていた。
ここにきて保険適用となったのは、不妊に悩むカップルには金銭面からしてとても心強い。
時間面
当たり前だが、タイミング療法は約1か月スパンで行われる。
さらに、より高度な治療には数か月単位での準備時間が必要とされる。
受精の確率をあげるため、女性側に薬剤投与などを行うからである。
その際、女性は毎週の通院を求められたり、いきなり「数日後に投薬のために受診して」などと指示されることがある。
また、田舎では不妊治療のクリニックが近くにないため、通院だけでもかなりの時間がかかる。
加えて不妊治療の患者さんが多く、クリニック自体がとても混んでいるため、診察待ちの時間もとても長い。
駐車場が患者さんの車で満杯になり、駐車場の空き待ち渋滞も発生することがある。
平日の仕事帰りに通院する女性の帰宅は、8時を回ることもある。
そのため、男性が早く帰宅し家事をこなすか上の子供の世話をするか、ライフサイクルに大きな負担が生じる。
メンタル面
不妊治療中のカップルは、先に述べた金銭面・時間面からそのメンタルが不安定になりやすい。
時間はどんどん費やしているのに、タイミング療法でも具体的に月に1度しかチャンスがなく、それ以外はもどかしい日が続く。
分析すると、具体的には次のツラさがあった。
ゴールの見えないマラソン
不妊治療を経験した夫婦として例えるならば、まさに「ゴールの見えないマラソン」。
不妊治療をしているからといって、確実に妊娠・出産できるわけではない。
いつまで走り続けるのか、ゴールまでの距離も分からないマラソンのようなものだ。
さらに、金銭面、時間面、自身の年齢などの要素により、後方から非情なタイムアップが迫る。
周りの家族の経過
不妊治療には時間がかかる。
その治療対象は働き盛りのカップルに絞られるので、本来は仕事や育児に割いていたであろう時間を不妊治療に割かざるを得ない。
実際に私の頭の中でも「あの家族には子供もいて、育児や仕事に時間を振り分けているのに、自分はできていない」と、他人と比べたネガティブな感情が頭をもたげてくるようになった。
他の家族はしっかり前に進んでいるように見え、自分たちカップルだけが前に進めていないように感じてしまうのだ。比べても仕方ないのに、どうしても他の家族と比べてしまう。
他人のこどもへのネガティブ感情
不妊治療中は、他人の子どもを見るだけでもツラい。
「どうしてあそこの家には子供が産まれて、ウチには産まれないんだ」と悲嘆に暮れてしまう。
ショッピングセンターや行楽地など人が集まるところでは、どうしても子どもが視界に入ってしまい、負の感情に苛まれる。
妻の兄夫婦も不妊治療を行っているが(妻の生家・父母宅に同居)。
正月やお盆などで、私たち家族がその家にお邪魔する際には必ず兄夫婦は外出している。
兄夫婦の妻が、親族の幼児を見ると特にツラいらしい。
しかし、そんなあからさまに不在にされると、我々夫婦も「避けられている」と思うようになる。
不妊治療による負の感情のスパイラル状態である。
その他 妊娠効果を謳うビジネス
先に述べてきたような不妊治療中のカップルのメンタル不安に付け込むように、妊娠効果を謳うビジネスや商品を目にするようになった。
消費庁はそのような風潮を察知して、以下のような注意喚起を行った。
令和元年度における景品表示法の運用状況及び表示等の適正化への取組 (caa.go.jp)
また、個人レベルのネットフリーマーケットなどでは、「妊娠菌」を付けたお米などを出品する妊娠菌ビジネスも見受けられるようになった。
耳を疑うような内容であるが、妊婦さんや経産婦さんには妊娠菌が付着しているらしく、それが他の女性の妊娠の確率を上昇させる、、、などといった眉唾物の説明である。
しかし、これがなかなか売れているらしい。
不妊治療に悩むカップルは不安に苛まれ、「藁にもすがりたい気持ち」が出てきてしまうのは当然である。
しかし、その不安を煽って付け入るようなビジネスはあまり感心しない。
カップルとしては開運、安産祈願のお守りを買うような心境なのだろうが、私たち夫婦は一切買わなかった。
夫の気持ち・サポートする男性側のツラさ
私は男性としての不妊治療を受けたわけではない。
あくまでも、夫婦で子供を授かるべく、妻の不妊治療を夫としてサポートしていた立場である。
「女性に比べれば、サポートする男性の苦労なんて大したことないでしょ」
と多くの女性が思われるはずである、たしかにそのとおりである。
ただ、「男性も子どもを授かるために特有のツラさを味わい、その上で女性をサポートしている」ということをぜひ知ってもらいたい。
フォローの言葉が出てこない
不妊治療後は2週間ほど経つと、女性の生理の有無で結果がわかる。
私も10回以上経験したが、この際の妻の表情がなんとも寂しそうである。
ここで気の利いた言葉をかけてあげたいが、こちらも残念な気持ちが抑えきれない。
何とか「また次があるさ」という言葉を絞り出すのが精いっぱいであった。
親族の年配男性が、不妊治療で着床せずに流産してしまった女性に対して、「あかちゃんができるってことが証明されたから、また頑張れる」と励ましたが、見事に女性の激しいひんしゅくを買った。
ここで求められるのは励ましではなく、共感して寄り添うことぐらいか。
夫婦関係
不妊治療を行っていると、毎月定期的に最適日や治療日を指定されるので、今までの性生活がガラッと大きく変化してしまう。
その最適日に合わせて、他のスケジュールを調整してコトに臨むも、残念ながら2週間後に結果判明して落胆というパターンが続く。
この合間で、今までの恋人同士のような性生活を営むことは、メンタル面からとても困難である。
妻が不妊治療中に、夫が浮気するというケースはたまに耳にすることがある(芸能界のビッグカップルが大きな騒動となった)。
男性側の寂しさは分からなくもないが、女性の方がもっと大きな負担を背負っていることを忘れてはならない。
精子採取
具体的な話だが、人工授精を行う際、クリニックから受精の最適日を定められる。
その日の朝、男性は自宅で専用の容器に精子を採取し、クリニックに持参する。
これが、男性としてはきわめて作業的に感じてしまう。
男性としての責務を果たすべきなのだが、どうしてもナイーブになってしまう。
さらに、人工授精でうまくいかずに体外受精に進むと、今度はクリニック内での採取を指示される。
私たち夫婦が通っていたクリニックには、採取専用の部屋が用意されており、成人男性向けの雑誌やDVDが取り揃えられ、リクライニングチェアとテレビが置いてあった。
女性が手術室のような部屋で、卵を取り出すための治療準備をされている一方、男性はこの部屋で採取に勤しむのである。
ここでも、女性の不妊治療のツラさを改めて実感させられる。
(妻の治療は小一時間で終わり、術後の安静のためベッドのある休憩室へ。そこで夫婦で数時間待機。妻の頑張りを労い、体調を気遣う。比較的のんびりした時間を久しぶりに味わい、受精卵の具合について説明を受けて終了)
夫としてできること
不妊の原因は女性が65%、男性が48%と、男性側にも多くの原因があることがわかってきた。
一方で夫が非協力的なほか、男性側にも原因があることを理解していないなど、夫婦間の気持ちに温度差がある場合が多い。
私も妻が葉酸を摂取し続ける様子を見続けているだけだったが、今の男性にはできることがある。
男性側の妊活サプリが開発される時代になっていたのだ。
◎コエンザイムQ10、亜鉛、国産マカ、葉酸、エナジーハニーなどの成分を豊富に含み、男性の妊活を総合的にサポート。
特に精子の運動率や質の向上、抗酸化作用を持つ成分が多く含まれており、男性の生殖能力の改善に寄与する。
まとめ 不妊治療でわかる夫の器
今回は長めの記事となったが、振り返ってみると、やはり女性側のツラさを再認識してしまう。
これを読んでいただいた男性方は、不妊治療中の女性パートナーの頑張りを改めて労い、しっかり共感して欲しい。
そして、日常生活でしっかり女性と家事を分担し、特に大事な時期はほとんどの用務を負担する気概でいてもらいたい。
今後産まれてくる子どものためにも、女性を孤立させてはいけない。
そして縁あって子どもに恵まれたら、この不妊治療の苦労を思い出し、両親2人でしっかり愛してあげて欲しい。
ツラい育児の途中で泣きたくなるときもあるが、子どもを授かるために頑張った不妊治療の経験は、きっとあなたを支えてくれる。
妊活は、女性だけに任せるものではない。
おまけ
少し古めの資料だが、不妊治療の現状に関する厚生労働省の資料を紹介する。
不妊治療の概要から、制度利用者の推移などを分かりやすく報告している。
不妊治療中の方、これから不妊治療を考えている方に、ぜひご参考にしていただきたい。
厚生労働省の資料 → 不妊治療をめぐる現状 (mhlw.go.jp)
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