2024年のご時世に、米不足だと!?
米が足りない。
2024年9月初旬、スーパーに行っても品切れ状態が続く。
マスコミなどで報道される原因は、次のようである。
- 南海トラフ地震の発生確率が高まり、国民の備蓄意識が高まった
- 8月終盤に、低速の大型台風が日本列島を蹂躙
- 新米の出始める前で、供給側の在庫が少ない
- SNSなどで不安が拡散され、買いだめ需要がより喚起される
不運なことに、いくつもの原因が重なっている。
ただ、起こってしまったことはしょうがない。
政府は国民の生活が困窮しないように、最善の手を打つべきである。
けれども、対応にあたる農林水産省がとった方針は、まさかのものだった。
やはり、三流官庁と言われるだけのことはある。
対応がマズい三流官庁
今回の農水省の対応は、「流通団体に対して、米の円滑な供給を要請」しただけだった。
大阪府の吉村知事から「備蓄米の放出」を要請されるも、
農水省は「米価が下がり、米農家の経営が圧迫される」として放出を行なわなかった。
これぞ、まさにお役所仕事!
私は公務員を退職した。
私が暮らす田舎では、銀行員か公務員になるくらいしか、地元での働き口がない。
それでも公務員を退職したのは、お役所業務に嫌気が差したため。
中央官庁と地方自治体で業務は異なるが、このようなお役所仕事は見事に共通する。
そのため、元公務員として「備蓄米の放出拒否」はその理由と裏事情が痛いほど分かる。
この記事では、ヤメ公務員の鋭い観点から、今回の農水省のずさんな対応を分析する。
公務員を退職した私のこと(プロフィール)
田舎の県で地方公務員として、約15年間勤務する。
前職の経歴と風貌から、税金の徴収係などハードな部署に回され続ける。
勤務10年目で第二子誕生の際、当時の男性では珍しい1年間の育休を取得。
育児をこなしながらも今後の人生を真剣に考え、公務員を退職して独立。
公務員時代の最終年度は、「有給消化46日/年度」という伝説的記録を叩き出す。
「あれだけ休んで、業務ノルマを軽く達成したイクメン」として同僚から注目を集めるが、上司からは「休みすぎ」という理由で最後に減点評価をされる。
小規模農業、ブログ運営、海外輸出を展開中。
(ブログは企業案件を受注し、継続お仕事中)
もっと細かく知りたい方 → 私のプロフィールへ(内部リンク)
2024年 米不足の原因
この令和の米不足は、まだ呼称が定着しているわけではないが、その背景と具体的な要因についてあげていく。
三流官庁のことが知りたければ、「マズい農水省の対応」に、移動 ↓
1. 農業の現状と米生産の問題
日本の農業は、人口減少や高齢化が進んでいることから、労働力不足が深刻な問題となっている。
農業従事者の平均年齢は高く、新規参入者も少ないため、特に伝統的な稲作においては生産効率の低下が懸念されている。
また、農地の集約や効率化が進んでいないため、個々の農家の負担が大きくなっている。
農業の効率化を進めるために、スマート農業の導入やICT(情報通信技術)の活用が推奨されているが、こうした技術を導入するためのコストや教育が不十分で、地方の小規模農家では採用が遅れているのが現状だ。
このような構造的な問題が米の供給に影響を与え、価格の変動や流通の混乱を引き起こしている。
2. 気候変動と天候不順
気候変動による天候不順も米生産に大きな影響を及ぼしている。
近年の異常気象、例えば猛暑、豪雨、台風などの自然災害が頻発し、稲の生育に必要な環境を安定して提供できないことが増えている。
特に水不足や日照不足、水害などが稲作に影響を及ぼし、収穫量の減少や品質の低下を招いている。
また、こうした気象の不安定さは地域によって異なるため、ある地域では大豊作になり、他の地域では不作になるという不均衡が生じ、市場全体の供給バランスが崩れる原因にもなっている。
このように、天候の影響が米の安定供給を阻害し、市場価格を押し上げる要因の一つとなっている。
3. 国際市場の影響と輸入米の問題
米の国際市場は、日本国内の需給バランスに直接影響を与える。
特に、米の価格は国際的な穀物市場の動向にも影響される。
世界的な米の生産量の変動や輸出国の政策変更により、日本国内の米価格に波及効果をもたらす。
4. 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響
COVID-19のパンデミックは、米の生産、流通、消費の各段階に影響を与えた。
感染拡大防止のための措置が農業現場の労働力確保を難しくし、生産効率の低下を招いた。
また、物流の混乱が米の供給チェーンに影響を与え、都市部と地方での米の入手しやすさに格差も生じた。
さらに、外食産業の縮小や観光業の停滞により、業務用米の需要が急減した一方で、家庭内での消費は増加。
この需要の急激な変化に供給が追いつかず、一時的に米の価格が高騰する現象が見られた。
5. 価格変動と消費者心理の変化
米の価格変動は消費者心理に大きな影響を与える。
価格が上昇すると、消費者は将来的な価格上昇を見越して買いだめを行う傾向がある。
この行動が一層の品薄状態を招き、価格のさらなる上昇を引き起こす悪循環が生まれる。
6. 政府の農業政策と市場の歪み
政府の農業政策も米市場に影響を与える重要な要素。
例えば、減反政策(減農政策)の撤廃や転作奨励政策の導入は、米の生産量や価格に直接影響を及ぼす。
減反政策は過剰生産を抑える目的で行われてきましたが、その撤廃により一時的な供給過剰や価格低下が発生することもある。
7. サプライチェーンの脆弱性と物流の課題
日本の米のサプライチェーンは、地域ごとに細分化されており、効率的な流通が難しい場合がある。
特に、自然災害やパンデミックなどの緊急事態が発生すると、流通網が混乱し、消費地への供給が滞る。
物流コストの上昇やトラック運転手の不足も、米の価格上昇や流通遅延の原因となっている。
農水省のマズい対応
農水省は今回の米騒動について、「新米の値段が下がって、米農家に損害が生じる」として、備蓄米の放出を行なわないこととした。
ここからは、農水省の「備蓄米を放出しなかった」ことについて、説明する。
「備蓄米(びちくまい)」とは
備蓄米の制度については、農林水産省が専用ホームページにて説明している。
「 政府としては、以前から、国民の主食であるお米について、不作の時でも国民が安定的に
食べられるようにしていたところですが、1993年にはお米が大凶作(だいきょうさく)
となり、消費者の方々がお米を求めてスーパーに殺到(さっとう)しました。この経験を踏まえ、いつでもお米を供給できるよう、1995年からは、法律により、国によるお米の備蓄を制度化しました。 現在は、100万トン(10年に一度の不作にも供給できる量)を備蓄しています。」
約30年前の大冷害の際、米不足が発生しタイから「タイ米」が輸入されるも、その味の悪さから酷評されたことがあった。
あれは、私も子どもながらに「タイの農家に失礼だろ」と思ったことを記憶している。
この備蓄米制度のもと、政府は毎年約20万tの米を買い入れ、保管期間(約5年)を過ぎた米は飼料用米などとして売却している。
放出しない根拠
今回の放出しないポイントは、「不作の時でも」という文言。
あくまで昨年から今年にかけて、お米はそこまで不作ではない。
農水省としては、「今回の騒動は不安にかられたデマが要因。新米の流通により、それも収まる」と踏んでいるのだろう。
今回の放出されなかった備蓄米は、きっと畜産用の牛・豚さんに食べていただけることだろう。
農水省が行った要請
しかし、そんな農水省もしっかり働いています。
米の流通業者に対して、円滑な供給を実現するよう要請を出してくださっています。
ちなみにこれは「要請」なので、罰則のある措置命令ではない。
単に、お願いしているだけだ。
名前も知られていない農林大臣から、言われてもねぇ。。。
しかも農林大臣はこの要請を行なったことについて
「要請が遅かったとは思っていない」と説明している。
早かろうが遅かろうが、どうでもよいのです。
備蓄米放出に対する見解
備蓄米放出について、世の有識者とされる方々には否定的な見解が多い。
その理由として、
- 新米の価格が下がる
- 9月には早くも、新米が供給される
- 今回は米不足ではなく、外食店などではしっかり届いている
- SNSなどで不安が必要以上に煽られている(情報弱者らしい)
たしかに、納得できそうな理由が並んでいる。
国民の実状
有識者の意見は一見納得できそうな理由だったが、現にスーパーでお米は入手困難である。
SNSの情報を見て飛びつきこそしないものの、一般的な生活で炊飯していたらお米は減る。
毎回、外食している方たちと自宅で自炊するものでは、事情が異なる。
さらに子どもたちがいれば、その消費ぶりは恐ろしいほどだ。
必ずお米を買いに行く必要がある。
夏休みが終わり、お弁当を持っていく中高生も多いことだろう。
そういう意味で、この農水省の対応は、図らずも子育て世帯を直撃する形となるのだ。
次元の違う話
有識者の理屈は的を得ているが、目の前で起きている現実の解決策になっていない。
米不足を「情報弱者の愚行」と断じることと、米不足に実際に困ることは大きく次元が異なっている。
生息しているステージが違う、といっても良いくらいだ。
農水省にできること
それは、大幅な価格低下を招かない程度に備蓄米を放出すること、に尽きる。
素人には難しいかもしれないが、それをクリアするために優秀な役人がいるのだろう。
また(言い訳ばかりの)の有識者会議も、構えていることだろう。
そして、私も国立大学でよぼよぼのおじいちゃんから「農業経済学」の講義を受けた。
こんなときのために国費を費やして、専門の学者も抱えているのだろう。
これらの「知」を総動員して、日本全体の損失を低減させる方法を考える好機なのだ。
こんな大事な見せ場を逃した農水省、三流官庁のトンネルは長い。
三流官庁の裏事情
さて、問題の農林水産省だが、昔から霞が関では「三流官庁」と呼ばれている。
一流官庁とは、財務省、外務省、総務省あたりを指す。
二流官庁はグレーゾーンだったが、新型コロナ騒動の対応により、厚生労働省も三流官庁に仲間入りした。
しかし、農林水産省はもっともっと由緒ある古株なのだ。
そして毎年、よく分からない政治家が大臣になる。
食の安全性が疑われた際は、その食材を用いて試食実況を行なっているくらいだろうか。
地方の各自治体についても、農林水産部門の順位は後ろのほうだ。
各部局の並びを示す「建制順」というものがあり、「防災」「戦略」「総務」など重要なものから並ぶ。
「農林水産」は、後方順位が定位置だ。
このような不遇の扱いによるのか、人材不足のためか悪循環が発生し、今日の我が国の拙い食料事情となっているのだ。
誰のほうを見て仕事しているのか(推測)
今回の備蓄米を放出しなかった件について、農水省はいったい誰の顔色を窺っているのか。
推測では、次の二つが挙げられる。
1.農水省と一蓮托生「JA」
まずは、日本農家の「ゆりかごから墓場まで」を掲げる農協「JA」だろう。
JAに忖度したことと推測される。
基本的に農林水産省の農業行政は、JA抜きでは成り立たない。
メインの米づくりについては、その年の米の引き取り価格は、JAから8月末には「概算金」として組合員に示されている。
2024年も人件費や肥料の値上がりにより、概算金が軒並みアップしている。
それを米の出荷時に支払うことで、農家を経営を安定させるのだ。
その後、米価が高ければ農家に追加代金が支払われることもあるので、値下がりは避けたいところだろう。
しかし、備蓄米の放出により米価の低下は、まず各JAが痛手を被ることとなる。
そうなると永田町の農水族議員は、次の選挙が危うくなる。
特に自民党の窮状では、気が気でないところだろう。
2.生殺与奪を握る「財務省」
次は、予算で生殺与奪の権を握る、「一流官庁」の財務省だ。
今回、備蓄米をうまく価格低下を和らげるように放出すると、その高い価格のまま備蓄米を補充しなければならない。
そうすると備蓄米購入のための予算を上回ることになってしまい、財務省に増額補正を依頼することになる。
一定の事情があるといえ、財務省に大きな借りを作ってしまうことになるのだ。
できれば米価を落ち着いてきたころに、新規の備蓄米を購入したいのだろう。
今こそ政治の出番
行政はこのように、もっとも声の大きな組織に向けた対策を行なう。
これは摂理みたいなもので、行政だけでどうにでもできるものではない。
デマかもしれないが、スーパーで実際に米を変えない状況が続いている。
こんな時こそ、政治家がいるのだろう。
JAの組織票でがんじがらめにされると、国民の窮状を行政に伝えることもできないのだろうか。
備蓄米の放出をJAに全振りしている農水省、その横っ面をひっぱたいてもらいたい。
このようなうっ憤のなか、自民党総裁選がしれっと行われている皮肉な国だ。
まとめ 2024年の米不足に思うこと
今回の米不足は、SNS時代特有の事象ともいえるだろう。
おそらく教科書に載るほどのことでもないし、来年になればみんな忘れているだろう。
そして農水省はじめその他官庁も、「声の大きい組織に顔を向けていればよい」とますますその姿勢を強めることだろう。
国民が困窮していても、政府は形式だけの要請を行ない続ける。
その結果、国民に負担増のしわ寄せがやってくる。
こんな国の公務員を辞めて、本当に良かった!
日本の行く先が見えた、2024年の米不足だ。
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