公務員の「応援」の仕事、ほとんどがクソつまらん!
毎年、国内の各地域で災害や危機が発生する。
その対応に当たるのも、公務員の重要な仕事である。
あの東日本大震災の直後、「応援として現場に入り、避難所の運営を手伝った」という話も、かつての同僚からよく聞いたものだ。
国難ともいうべき大災害のほか、各地方で発生するそれぞれの危機にも公務員の方が応援として対応している。
この記事では、私が10年以上公務員として働いた中で関わった「応援」の業務を紹介する。
この『くそつまらん!公務員』シリーズでは、公務員の仕事をネガティブに面白く紹介する。
「公務員になりたい!」という学生の方々は、心して読んでもらいたい。
社会人の方は「公務員って大変なんだな」と、少しでも共感してもらえると幸いである。
地方公務員を退職した私のこと(プロフィール)
田舎の県で地方公務員として、約15年間勤務する。
前職の経歴と風貌から、ハードな部署に回され続ける。
しかし第二子誕生の際、当時の男性では珍しい1年間の育休を取得。
育児をこなしながらも今後の人生を真剣に考え、公務員を退職して独立。
引き継いだ農地で小規模農業を行いつつ、ブロガーとして歩み始める。
もっと細かく知りたい方 → 私のプロフィールへ(内部リンク)
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応援1 家畜の大量殺処分
近年「豚コレラ」や「鳥インフルエンザ」というニュースをよく耳にするようになった。
そのニュース映像では、全身真っ白の防護服を着用した人たちが、ワサワサと動いている映像がよく流される。
それこそが、まさに「家畜の大量殺処分」。
公務員の中でも、指折りに過酷な応援業務である。
このような家畜に関するお仕事は、農林関連の部署の主幹となる。
そこではとうてい人手が足りないので、他部署に「応援要請」を行なうのである。
私が勤務していたころ、不幸なことに県内で豚コレラが発生。
私にも派遣の順番が回ってきたので、豚の殺処分に駆り出されることになった。
伝染病が発生すると、殺処分
そもそも『家畜伝染病予防法』により、
「豚コレラや鳥インフルエンザなどの伝染病が家畜に発生すると、その農場一帯の家畜を殺処分しなければならない」
と定められている。
なんとも無慈悲な法律であるが、伝染病を予防することに重きを置いているのだ。
現在では農林水産省も畜産業者のダメージを考慮し、農場を区分けすることで殺処分の区域を狭くするなど改良している。
外部リンクへ → 家畜伝染病予防法 第16条(と殺の義務)
実際の流れ
応援の対象となった公務員は、特定場所(地方庁舎)に集合し、あの真っ白な防護服を身にまとう。
そして手配した民間の大型バスで、その異様な数十人の集団を畜産場に連れていってくださる。
バス内は感じたことのない異様な雰囲気。
これからのハードワークを考えると、口を開く余裕もない。
「同じ職員」といっても、ほとんどが顔を合わせたことのない職員がほとんど。
さらに防護服によって、誰が誰だか見分けもつかない。
(画像は、イメージです)
そもそも、豚コレラ、鳥インフルエンザが発生すると、
その農場全体の家畜を殺処分する!と『家畜伝染病予防法』で定められている。
そのため、いったん「発生」と認定されると、
大量の公務員などの人員を投入し、何万頭・何万羽もの家畜を殺処分しなければならない。
先に触れたニュース映像では、
殺処分された死骸の入ったコンテナバッグを、フォークリフトで地中に埋める様子
がよく放映される。
応援の公務員のみなさんは、その前段階の殺処分を行なうことになる。
家畜によってそのやり方が異なるが、豚の場合は、獣医師資格を持つ公務員が殺処分を行っていた。
実際には、獣医師が電気ショックや注射によって殺処分を行なっている。
一方、一般公務員の役割は、殺処分を行う獣医師の所まで豚を追い立てることだった。
見た目には簡単に見えるが、実際にやってみるとなかなかツラい。
豚の重さも80~200㎏と幅があり、
特に大型の豚が肥育されている豚舎の場合、その追い立てる苦労は大変なものがあった。
また、理由も分からず追い立てれる豚も、すくんでしまったり抵抗したりする。
100キロの生物が、その場にうずくまってしまうと、動かすの至難の業である。
私は獣医師の前で「最後のひと押し」をするところに配置されたが、家畜相手に相撲を取っているような動きが求められた。
その応援業務から帰ってくると、身体はヘトヘトに疲れ果てていた。
翌日からのメンタルが変化
その殺処分で驚くべきは、翌日からメンタルの大きな変化が待っていたことである。
なんと、家畜の肉を全く食べれなくなった。
スーパーの食肉売り場で赤身肉を目にするだけでも不快になり、その香りを嗅ぐとすさまじい吐き気に襲われた。
今回の殺処分では、私は最も過酷な箇所に配置され、その現実から目を背けることなく見届けた。
その反動が大きく、トラウマのようになってしまった。
有事の対応は、公務員の仕事
そもそも公務員なので、疫病や災害などの有事の対応は当たり前と心得ている。
傷ついた人々を助けることであれば、なんとか踏ん張れるかもしれない。
しかし、病気になってもいない家畜を一斉に処分するのは、精神的にツラいものがある。
その反面、このコロナ禍で人間の感染者がホテルなどの宿泊施設で隔離されるというのは、強烈なアイロニーに感じてしまう。
全国の災害対応の働きの裏では、心を強く痛めている公務員がいることを心に留めてほしい。
応援2 コロナ禍の営業自粛呼びかけ
2021年頃から国内も新型コロナウイルス禍に見舞われた。
そんな中、公務員は新たにコロナ対応の業務に追われるようになった。
様々な応援業務が新たに発生し、国内行政の分岐点となった年かもしれない。
コロナ渦の主要な応援:保健所に派遣
新型コロナにかかわらず、感染病などが発生すると各地の保健所が対応の最前線となる。
応援職員の派遣先としても、保健所への応援派遣が突出して多かった。
保健所では、病院などから報告されたコロナ患者に実際に電話連絡を行なう。
そして数日中の接触者を割り出し、次はその接触者にコロナ検査を受けてもらうよう電話連絡をする。
コロナ検査を受けてもらった方には自宅待機をお願いし、数日後に検査結果を報告する。
まさに、「しらみつぶし」作戦。
この対象者が膨大にあり、保健所では日付が変わるまでの残業も当たり前だったという。
コロナ渦のびっくり応援業務
コロナ応援業務で、最も衝撃的だったのは、
「夜遅くまで営業している飲食店への、営業自粛呼びかけ・見回り」
であった。
覚えている方もみえるだろうか?
当時、私もニュースで知らされてかなり驚いた。
まさか自らの所属でも実施するとは思わなかった。
内容としては、
公務員が、夜中に営業している飲食店を見回り、決められた時間以降の営業自粛を呼びかける
というものだ。
「営業自粛を知らない」という飲食店は、その当時いなかっただろう。
つまり、夜中に営業している飲食店は承知のうえで行っている。
そこに公務員が営業自粛依頼に飛び込むのだから、店主側ともめるのが容易に想像できる。
しかも、周りには酔っ払い客がいる可能性があり、より批難を浴びる可能性がある。
私の職場でも、この業務に実際に駆り出された職員がいた。
もし、私にお鉢が回って来ていたら、その場で退職していたかもしれない(汗)
この営業自粛応援で痛感
そもそもこのコロナ禍で、私は自らの職務を見つめ直し、無力感に苛まれることも多々あった。
コロナ感染を抑え込むことは、とても重要であると言われている。
しかし、この営業自粛の圧力は、わが国の憲法で認められた「経済活動の自由」を制限しているという指摘もある。
飲食店には協力金が支給されるとはいえ、大規模な店舗ではその間の従業員の賃金をとうてい賄えない。
コロナ渦の対応については、「これが正解」と単純に言えるものではない。
営業自粛の呼びかけに思うこと
しかし、「営業自粛の呼びかけの見回り」は、目的到達のための手段として浅はかすぎないだろうか?
分かりやすく例えると、
「修学旅行の夜に、教師が生徒の就寝状態を見回っている」感覚に近いのではないか。
(私もよく怒られたものだ)
このように、「教師→生徒」の絶対的な力関係があれば、この手段は有効に働く。
しかし、敢えて営業している飲食店に、行政の「お願い」レベルではそもそも効果はないだろう。
つまり、中央官僚による「コロナ対策、やっていますよ」感が、どうしても拭えない。
この「夜回り」という切ない業務に従事した国内の公務員の方には、本当に頭が下がる。
きっと、お酒絡みの無用なトラブルに巻き込まれた方もいるだろう。
応援3 大型イベント
「国民体育大会(国体)」などの公的な大型イベントが開催されると、公務員はもう大変だ。
その地域の公務員が応援として派遣されたり、イベント事務局のスタッフとして働くことがある。
これらは危機対応ではなく、その地方を盛り上げるためのイベントであることが多い。
多忙な業務であることは違いないが、いくぶん前向きな応援業務である。
以下は、私の良き思い出としての実体験である。
G7サミットが県内で開催されることになり、所属で派遣希望者を募っていた。
そこで私は、無謀にも立候補した。
その結果、4日間だけだが外務省職員として、中央省庁の高級官僚とデスクを並べて仕事をした。
応援当日までに少しでも「英語脳」にシフト
派遣決定から当日までに、英会話学校2校に1か月ほど通い続けた。
”付け焼刃”を承知で、少しでも「英語脳」にシフトさせたかったからだ。
・この際の心境や葛藤は、こちらの記事で解説 ↓(内部リンク先へ)
他の職員の割り当て
サミット会場には、要請により動員された職員が多数いた。
中には、私の顔なじみの同僚も応援に来ていた。
だが彼らはバス誘導や駐車場整理係として、シフト制による交代勤務をさせられていた。
まるで、パート勤務状態。
これなら外務省がアルバイトで一般人を募集するか、イベント会社に頼めば良いのに。
地方公務員は都合よく働かされるというのを身をもって実感した瞬間だ。
私の実際の業務
私は4日間、片道2時間かけて会場に通い続けることになった。
その甲斐あって、サミット当日には各国首脳や要人と至近距離で仕事もできた。
今は亡き安倍晋三氏を近くで見ることもできた。
道を尋ねてきた外国のプレスに、付け焼刃の英語で道案内をすることができた。
何よりも外務官僚の超独特な働き方を学ばせてもらうことで、貴重な体験をすることができた。
良い経験ではあったが、物足りない
サミット期間が終わると、過酷な業務を乗り切ったという変な満足感。
サミットの意義についてはさまざまな見方があるが、やり切ったことに満足してしまっている。
ちなみにサミットで採択された決議は、ひとつも覚えていない。
気候変動がどうたら述べていたが、毎回触れるテーマだろう。
現代におけるサミットの意義は、いったいなんだろうか。
迎える地方公務員としては、世界のトップレベルの首脳が観光に来たというイメージだ。
応援4 大規模災害
毎年、国内各地で発生する台風や大雨被害。
応援の公務員は、避難所や給水所での対応に当てられる。
自宅が被災していらいらする住民が、公務員に食ってかかる様子も散見される。
応援に入る公務員も自宅が被災していたりして大変なのだが、「公務員が対応するのが当たり前」という態度の住民に遭遇するとつらい。
東日本大震災クラスの災害が発生したら
もし東日本大震災クラスの災害が発生すると、大規模かつ長期に公務員の私生活までぐちゃぐちゃになる。
公務員は緊急時の派遣対応となるが、そもそも公務員がどれだけ生きているかどうかも不明だ。
公務員の各職場では、日頃から「災害の際は、最寄りの勤務可能地までたどり着け!」と緊急時の応援業務を厳命している。
しかし、いざ大規模災害が起こればまず不可能だろう。
道路やインフラがめちゃくちゃな中で、空でも飛べない限り庁舎まで辿り着けない。
公務員の中で重宝される「愚直くん」は、不思議な使命感と死力を振り絞ってなんとか庁舎にたどり着くだろう。
しかし、山積みの災害対応業務や壊滅したインフラによって自宅には当分帰れないだろう。
未曾有の災害に対しては、想定外のことが起きる。
住民の方は、最初から公務員の応援などの「公助」を期待しないほうがよい。
災害の発生を見越して、自分の身や家族は自分で守って、どうやって生き延びるかを念頭に考えるべきである。
まとめ 公務員の応援業務は増え続ける
災害や不測の事態が起きれば、公務員が応援などで対応する。
もちろん正しい理屈だが、これまで応援業務が増え続けているという現実もある。
ひと昔前に比べ、鳥インフルエンザ、豚コレラ、そして新型コロナウイルスと、新しい応援業務が確実に増加している。
特にコロナ対応では応援業務がひっきりなしに要請され、本業に影響が出ている部署も多数あった。
応援に行く職員も、慣れない職場で大変。
残る職員も、応援職員の抜けた穴をカバーするのに大変。
いったい、何のために働いているのかさっぱり分からない日々が続いた。
「スクラップ&ビルド」=「事業を一つ増やすなら、ひとつ廃止せよ」の考えは、応援業務の領域では全く馴染んでいない。
日本人の伝統観で、「苦しいのは、みんな一緒。もう少しで乗り越えられるさ」の精神で、未来永劫臨むつもりなのだろう。
はぁー、これは公務員を辞めたくなるわ。
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