コーヒーを注ぎすぎ公務員校長に懲戒免職
2024年1月30日、兵庫県教育委員会は県内中学校の校長を懲戒免職処分とした。
同校長は2022年12月、コンビニのセルフ式コーヒーの利用に伴い、レギュラーサイズを注文したにも関わらずラージサイズ分を注いだとして、窃盗の疑いで書類送検された。
約半年の間、複数店舗で同様の行為を7回繰り返していたとのこと。
県教委はこの行為を「教育公務員としてふさわしくない著しい非行」と判断し、懲戒免職に至った。
被害総額は約490円で、SNS上では「懲戒免職の処分は、重すぎではないか」という声があがっている。
しかし教員の先頭で模範となる校長が、確信犯的に窃盗を繰り返していたことを踏まえ、数千万円もの退職金を失う懲戒処分となったようだ。
目先の小金に目がくらみ数年後の大金を失うという、『日本昔話』にも収録されそうな出来事だ。
しかしこんな笑い話のような事件には、子どもに学ばせるべき重要なポイントが隠されていた。
今回の記事は、この哀しい出来事を紐解き、将来を担う子どもの学びに役立てようと執筆した。
ポイント:「性善説」のもとで運営されるセルフコーヒー
読者のみなさんは、コンビニのセルフコーヒーを利用したことがあるだろうか?
コンビニのレジカウンターの横か、入り口近くに置いてあるドリップマシンだ。
コンビニで所定の金額を支払い、専用カップを受け取る。
そのカップを持って、ドリップマシンから注文したコーヒー類をセルフで注ぐというものだ。
最低100円から本格的なコーヒーが楽しめるので、どのコンビニにもたいてい設置されている。
店員さんが注ぐ手間もなく人件費も抑えられ、気軽に立ち寄れるコンビニの良い「客寄せ」になる。
そんな理由で、国内で爆発的に普及したのだろう。
しかしこのセルフのコーヒーシステムは、日本国内の「性善説」に基づいた危ういシステムなのだ。
公務員を自己都合退職した私のこと(プロフィール)
田舎の県で地方公務員として、約15年間勤務する。
前職の経歴と風貌から、税金の徴収係などハードな部署に回され続ける。
第二子誕生の際、当時の男性では珍しい1年間の育休を取得。
育児をこなしながらも、今後の人生を真剣に考え公務員を退職して独立。
当時の職場では成果を出して目立ってはいたが、この校長のような懲戒処分を受けたことはない。
少額ながらも退職金は支払われた。
引き継いだ農地で小規模農業を行いつつ、ブロガーとして歩み始める。
・もっと知りたい方 → 私のプロフィールへ(内部リンク)
懲戒免職を引き起こしたセルフ式のコーヒーシステム
この全国のコンビニで導入されているセルフ式のコーヒーシステムは、安くておいしいコーヒーが飲める。
設置する店舗の手間としては、機械のメンテナンスくらいだろうか
店員さんが操作する手間がないから、特に忙しい時間帯には大助かりだろう。
このように店舗側の人件費を抑えることができるから、100円からの低価格で提供できるのだろう。
しかしこのシステムは、「お客さんは、注文通りの分量を注ぐ」という日本独特の’性善説’のもとで成り立っている。
その性善説のもとでは、お客側の子ずるい心理が芽生えてしまう。
まさに「魔が差した」という心理がぴったりだろう。
セルフコーヒーの心理:「誰も見てないから、いいか!」
このようなセルフコーヒーを操作すると、誰もが思うこと。
それが、「分量を多くしても、バレないだろう」だ。
たしかに初犯ならば、その場でバレることは滅多にないだろう。
レジが忙しい時間帯ならばなおさらバレない、仮にバレても「間違えた」で逃れられそう。
飲料を注ぐ関係でカップはやや大きめなので、多めの分量を注いでも収まる。
それなりの料金も支払っているので、罪の意識も薄まってしまう。
しかしレジの売上とマシンの抽出回数を清算すると、必ず差額が発生し窃盗が発覚する。
店舗側も怪しい客は雰囲気で感じ取れる。
店の防犯カメラで顔も割れているので、近隣店舗で情報交換もできそうだ。
ぱっと見で「チョロそう」なズルだが、予想に反してハイリスクな行為であることを自覚した方がよい。
「自分だけは大丈夫」が横行すると崩壊するシステム
このようなセルフのコーヒーシステムでズルが横行すると、システム自体を撤去することが考えられる。
レジカウンター内にマシンを引っ込め店員が操作することで、利用料金が上がる可能性もある。
またMサイズやコーヒーのみしか選べないなど、サイズや種類を限定されることもある。
「微量だから、自分だけはやっても大丈夫だろう」という心理で多数のズルが発生すると、まっとうな利用者までが割を食ってしまうのだ。
日本人の価値観「おてんとさんが見ている」
現代までの日本人の美徳として、
「お天道(てんと)さんが見ているから、悪いことはできない」が挙げられる。
太陽神信仰の一種とも考えられるが、この考えのもと悪いことやズルを慎む慣習がある。
「ズルしたい」という邪(よこしま)な思いに打ち克ち、まっとうに生きる日本人の美徳だ。
しかし数十年の不景気により、この美徳が失われつつあるのかもしれない。
物価の値上がりに対して、賃金の上昇が追い付かない国内。
節約・蓄財ムードが高まり、「少しでも得したい」という気持ちが湧いてくるのも必然か。
子どもに教えたい合理的な説明
子どもには「ズルをするな!」と教えたいところだが、「おてんと様理論」では時代にそぐわない。
だからこそ、合理的な説明を考えた。
1「このような低価格のセルフシステムは、みんなの信頼のもとで成り立っている」
2「でもみんながズルをすると、システムがなくなったり値上げされてしまう」
3「その結果、システムは不便なものとなってみんなで損してしまう」
もしかしたら経済学の「合成の誤謬」理論と近いものがある。
一方、「バレたら警察に捕まり、罰金を払う」という理論も、ある程度の効果が見込める。
しかし「それならバレないように上手くやろう」とワイルドに考える子もいるだろう。
「良い子にしていないとお化けが来るぞ!」という幼児用の脅しに似ているので、避けたいところだ。
ズルを防ぐ典型的なシステム
懲戒免職の騒動にまで繋がったこんなズルを防ぐには、果たしてどのようなシステムが良いのか。
巷には、ズルを防ぐためいろんなシステムが導入されている。
駅の自動改札機
まず思い浮かぶのは、駅の自動改札機。
ふさわしくない切符を通すと、ブザー音と共に「バン!」と両サイドから無慈悲に板が飛び出す。
タイミングが悪いと、椎間板にモロにダメージを喰う。
(私は小さいころから『椎間板クラッシャー』と呼んでいた)
そして後ろの利用者から「チッ!」と舌打ちされ、哀れな晒し者気分を味わうこととなる。
これは、「タダ乗りなどを企てる輩」を問答無用で締め出す典型的なシステム。
駅はさまざまな人が行き交い、社会的に信用が置けない輩も利用する。
そんな場所だからこそ、このような「性悪説」に基づいたシステムが根付いたのだろう。
しかしコンビニでこのようなブザーが鳴ったりすると、利用客が敬遠し売り上げも減少するだろう。
フランスの地下鉄
私が訪れたことのあるフランスでは、全く事情が異なっていた。
改札に入るときは誰でも簡単に、切符なしでも入れる。
しかし改札を出るときに、切符を持っていないと警察を巻き込む大騒動になる。
専門員が定期的に巡回し、切符を確認することもある。
実際に、取り締まりを受けて狼狽している現地民も目の当たりにした。
そのため添乗員さんからは、「無事に帰国したいなら、必ず切符を買って入場し絶対に無くさないこと」と何度も念押しされた。
性善説に基づいてはいるが、バレれば厳罰!というシステムが、存在していた。
日本国内において、数百円の窃盗犯にこのような厳罰を科すのも、行政コストの面から非現実的だろう。
アフリカでの飲料水事業
今回のコーヒー事件を考えるにあたって、もうひとつ思い浮かんだシステムがある。
それは、水に困るアフリカで飲料水を提供する仕組みについてだ。
浄化装置を開発した企業が、アフリカの地域で浄化装置による水供給を開始した。
ほどなくすると、蛇口が盗まれて村のみんなが使えなくなってしまった。
住民がわずかなお金欲しさに、金属の蛇口を盗み売ってしまったというのだ。
まさに一人のセコい儲けのために、他のみんなが不利益を被る構造だ。
水供給システムの解決策
この蛇口泥棒に対する対応策は、「ビジネスにする」ことだった。
簡単に言うと、この飲料水システムを住民のビジネスとして担わせる。
そうすると、泥棒対策のため警備にも人を割り当てることができる。
「住民の性善説だけでは成り立たない」ということがよくわかる事例だった。
あったら嬉しい平和なコーヒーシステム
ズルする輩を強制的に排除するシステムも、どうやらコンビニのセルフコーヒーマシンにはなじまない。
このまま低価格で利用し続けられるには、どのようなシステムが良いのだろう。
レジと連動
コーヒーマシンにWi-fi機能を持たせ、店のレジ注文と完全に連動させる。
注文を受けたマシンでは、注文通りのボタンしか押せないようになる。
これならば、客側の’単なる押し間違い’も防ぐことができるだろう。
マシンを開発する会社には大きな設備投資が必要となるが、「信用できるマシン」として店舗側の人気が高まるのではないか。
マシン上部にモニター設置
マシンの上部に大きなモニターを設置し「Lサイズを抽出中」などと表示させる。
モニターは、カウンター内にいる店員が視認できる方向に向けておく。
注文を受けた種類や、サイズの読み上げ機能があっても分かりやすいのではないか。
これで店側には、客がどのサイズを注文しているのか一目瞭然になる。
こんなモニター画面が表示されていたら、ズルをする勇気もなくなるだろう。
モニターの開発費用がかかるかもしれないが、店側のマシンに対する信頼も上がるだろう。
店側や従業員さんとしては、怪しい客をマークし注文内容を覚えておくという手間が発生する。
まとめ 公務員としてラージ級の懲戒処分を受けた校長
今回の校長への処分については、国内で「重すぎる!」という声が挙がっている。
ちょうど、国会議員の「ウラ金問題」が大々的にやり玉に挙がっているためだ。
国会議員の裏金は数百万円でも不起訴。
一方この校長は、数百円の窃盗で懲戒免職&退職金無しというトホホな対比だからだ。
そもそも「不起訴」と「懲戒免職」は比較対象がふさわしくないが、この校長には哀れみの声もあがるのはうなずける。
さてこの事件を受けて、われわれ保護者は子どもに何を伝えるべきか。
「こんなことになるから、ズルはダメだ!」では、子どもの心に一時的にしか残らないだろう。
やはり「みんなの信頼のもとで成り立っているシステム」をもとに、自らのズルがシステム自体を崩壊させ不利益な結果に繋がることを説明したい。
このような合理的な知識や考え方を与えることで、日本を支える新しい力として、子どもの考える力を伸ばしていきたいものだ。
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