2世公務員という存在
安倍元首相が襲撃されてから、「2世信者」という言葉が世間で注目されるようになった。
2世信者とは、親がある特定の宗教信者であり、その子が生まれたときから信者にされた方とする。
生まれたときから選択の自由がほとんどなく、生活の大部分をその宗教が占めていた、という大変な話をよく聞く。
今回この記事で注目するのは、その2世信者と共通点の多い「2世公務員」である。
2世信者と同様、2世公務員も親が構築した環境に苦しめられていることが多い。
私が勤務していた自治体でも、2世公務員の方が多数みえた。
その中には、自身の状況に安穏としている方もいれば、つまらない公務員生活に真剣に悩み苦しむ方もいた。
この記事は、そんな真剣に悩む2世公務員に向けて書いたものだ。
悩める2世公務員だけでなく、その周辺の親族の心にも深く刺し込みたい。
また、「子どもを公務員にしたい」と漫然と考えている方にも、ぜひ読んでいただきたい。
これを読むと、2世公務員の印象が変わるだけでなく、つまらない公務員全体のデメリットがわかるだろう。
「2世公務員」とは?(この記事での定義)
この記事での「2世公務員」とは、
親が公務員である、または公務員であった、現職の公務員(主に若手)
とする。
加えて、親が同じ組織・自治体の職員だけでなく、別組織・自治体の公務員の場合も含める。
なぜなら、公務員である親の意向が、家庭内でしっかり子どもの幼少期から影響を与えるからである。
「2世公務員」の苦悩
2世公務員は、入庁後まもなく「あの新入職員、〇〇さんのお子さんだってよ~」とウワサされる。
その親が幹部職員ともなると、ウワサに拍車がかかる。
しかし、そこで当の本人のデキが悪いと
「あの〇〇さんのお子さんなのに、、、」
と必要以上にウワサされる。
まったくもって理不尽だ。
一方、その親が問題を抱える職員ならば、
「アイツの子か、どうせデキが悪いのだろう」
と最初から決めつけられる。
なんと驚くことに、「その親から受けた仕打ちを、その子に返す」
という江戸時代のような復讐話も実際にあった。
なんて狭い世界(嗤)、そしてつまらない世界。
一方、2世公務員の本人は入庁してから数年、仕事に馴れるためにも一心不乱に働く。
健気に、親の期待に応えるためにも。
30歳ころが、苦悩の始まり
仕事がいっぱしにできる30歳頃になると、異動・結婚・出産などが周囲を取り巻く。
そして、仕事の「やりがい」に疑問を抱き始める2世公務員が出てくる。
本当の苦悩は、ここから始まる。
一般的な職員と同様に、異動した所属に満足できなかったり、同僚・上司との関係に悩んだりする。
そこで、「親の敷いたレールに従ってしまった」と、後悔を抱えながら働く2世公務員が出始める。
本当は就職前に気づくべきだったのに、「親の洗脳」がようやく溶け始めるころなのだ。
なお、親の洗脳が溶けずに、定年まで勤めあげるおめでたい方もみえる。
公務員である親の意図
さて、自身の子を入庁させようとする親の意図は、いったいなんだろうか。
これは、ほぼ断言できる。
自分自身が安心するべく、子供を安定した職に就かせるためだ。
その親は建前で、「子どもに苦労をさせたくない」などと建前を耳にするが、
自身の心労を減らしたいのが本音だろうし、自身が公務員で居心地がよかったのだろう。
だからこそ、子の就職や労働環境で親がヤキモキしたくないのだ。
まさに、子の人生を自らの思い通りに操ろうという浅ましい魂胆だ。
家庭環境を、都合よく構築
親の「子を公務員にさせたい」願望に沿って。その家庭環境は構築される。
実際は、マイルドな洗脳と呼べる環境なのかもしれない。
これが、2世信者との共通点である。
2世信者は、出生時から信者扱いされる。
一方で2世公務員は、自身で選択し、難関とされる試験に合格しなければならない。
だからこそ公務員の親は、子どもの幼少の頃から、公務員のメリットを子の心に刷り込んでいく。
公務員のメリット
公務員のメリットはすでに一般に知られているが、まずは「安定」だろう。
「安く定まる」と書いて「安定」。
退職した私には、安心できるまでリスクを減らした低空飛行をイメージしてしまう。
控えめに言っても、公務員の労働環境はかなり恵まれている。
特に女性だと、出産しても産休・育休後に働き続けられることが多い。
市役所職員などは通勤時間も短く、育児・家事とのバランスも取りやすい。
私の場合も、母親のワークスタイルのおかげで大学にも通わせてもらった。
だから、ここで文句は言えない。
父親がポンコツであった分、なおさら母に文句は言えない。
このように、思春期から青年期において、公務員の親の状況がわかるようになる。
すると、就職先として「公務員」が現実味を帯びてくる。
親の意図の有無にかかわらず、これにて洗脳は成功した。
現代のつまらない公務員の実状
公務員のメリットは、いまだに残っているかもしれない。
しかし、時代は変わる。
新出する社会問題に対応して、公務員の仕事範囲は大幅に広がっている。
それに比例して、公務員のデメリットが増える。
ありていに言うと、社会の面倒ごとは公務員の仕事である。
社会の貧困問題、鳥インフルエンザや豚コレラによる家畜殺処分、
最近ではコロナ患者対応、そして想定を超える災害への対応、
ひと昔前で、ここまで想像できただろうか。
一方、今まで行っていた公務員の業務が、キレイになくなることはほとんどない。
既存事業の廃止ほど、公務員にとって難しい業務はない。
だからこそ、公務員の仕事はつまらないのである。
そして、公務員の業務は拡大しつづけ、職員の心身を圧迫するのである。
2世公務員の親の公務員は、その変化を直視できているだろうか。
「それでも安定が一番」と天才的に割り切る公務員は、どの所属にも一定数存在するからスゴイ。
自らの子に得てほしいスキル
私は40歳になる前に、公務員を退職した。
子どもは未だ幼児だが、既に家庭の教育方針は定めてある。
子どもが将来、公務員に魅力を感じないように、
「自身で稼ぐ力、生きていく力」を養いたい。
具体的には、興味のあることをどんどん追及させ、行きたいところにも連れていく。
今のところは、電車の好きな子鉄ちゃんになってしまったが、好きなものに打ち込むことは自らの世界を広げるだろう。
親の気持ち&先人の教訓
子を想う親の気持ちは、尊い。
その心配は、同じ親として痛いほどわかる。
ここで、そんな親の心配を豪快に笑い飛ばせる先人の教訓を紹介する。
「親の言うことに従って成功したものは、いない」
親の時代と子どもの時代では、周囲の環境が大きく異なるからだ。
特に、これからは環境の変化がますます激しくなる。
そうなると、親の常識など微塵も通用しない。
もし子どもの将来が不安だとしても、
ひとりの親として、子どもの才能や将来を信じてみてはどうか。
さいごに 苦悩する2世公務員へのメッセージ
入庁後から30歳を過ぎても、立派な公務員である子のキャリアに口を出すバカ親公務員がいる。
がくぜんとするほど、狭い器量だ。
そんな中で、つまらない仕事に苦悩し続ける2世公務員がいる。
私は、自らを変えようと苦闘するその姿に心を打たれる。
今の安定した身分を棄て、違う世界に飛び込むには不安がつきまとう。
しかしその不安は、勉強することで軽減・解消できる。
皮肉なことに、自らで勉強できるという環境面では、最高の時代が訪れている。
勉強で自信を高めそうとうの意思力を持てれば、公務員を退職する決断が可能となる。
2世信者と2世公務員の大きな違い
ここで、2世信者と2世公務員の大きな違いを、強く主張したい。
2世公務員のあなたは、
最後は自分で選んで勉強して、難関とされる試験を突破した
という事実がある。
あなたに備わっているその力、今度は自分のためだけに使ってみてはどうか。
望みを叶える力があることは、すでにあなたが証明したはずだ。
世界の労働市場の流動化は、日本を巻き込みながらますます進む。
そして、国内の公務員にも転職・退職者が増えるだろう。
併せて、公務員の「副業禁止」という制約も、ある程度は見直されるのではないか。
この記事では、公務員に違法行為を促すことはしない。
しかし、考えて、勉強して、真似し続けることで、方策は見つかるだろう。
ひとりの2世公務員が「退職する、しない」は、私にも社会にも大きな影響はない。
しかし私は、その苦闘する姿を美しいと思う。
きっと、ご自身の選択肢を増やし、明るい未来を引き寄せる。
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